新規事業に取り組む前に

国内市場が成熟、縮小する中で、海外展開、M&A、そして新規事業の創出が大きなテーマとなっています。企業規模を問わず、どの企業でも検討しやすい新規事業ですが、実際に取り組む前に知っておくと良いことをご紹介します。

まず、新規事業の成功確率は低いものです。実際に新規事業に資金や人員などのリソースを投入する前に、既存の顧客基盤や商品などを活用してできることは残っていないかを見直してみることには価値があります。

新規事業で最も大変なことの一つに新規顧客の獲得があり、大きな労力とコストがかかります。そのため、すでに持っている既存の顧客基盤に対して何か新しい商品やサービスを提供できる余地が残されていないかを今一度検討する価値はあります。チャネルがあるのでテストマーケティングもしやすく、新しい試みの成功確率が高まります。

次に、既存顧客に提供できる新しい商品やサービスの余地がほとんど残っていない場合でも、すでに持つ自社の商品やサービスが従来は対象としていなかったような市場に形を変えて提供できないかを考えてみることにも価値があります。工業製品向けだったある商材が一般消費者向け市場に使え評価されるなど、色々と展開の可能性はありえます。

いずれの方法もすでにある自社の強みを活用して始められる試みで、小さく始めて大きく育ってくれば事業部にすることもできますし、その段階で初めて新規事業と捉えなおすこともできます。

逆に、まったく新しい新規事業を考えよ、といった指示をすると大変です。せっかく持つ顧客基盤や商品/サービスなどの自社の強みを活用できないわけですから。まったく新しく考えることでイノベーションが生まれる可能性もありますが、成功確率は低くなります。

しかしやはり新規事業を考えるしかない、といった場合、どういった人材をリーダーに任命するかということも成功に向けた大きなポイントです。

最も適しているのは創業経営者です。実際にはなかなかいませんが、そういったタイプの人材をイメージすると良いでしょう。

新規事業には多くの困難が伴いますので情熱があるかどうかが重要です。やらされているようでは成功はおぼつかず、腹の底からこれがやりたいというぐらいの情熱が必要です。そういった情熱を持つためにも、リーダーは新規事業の検討当初から関わっているべきです。

当初は限られた人員で取り組むことになりますので、リーダーはオールマイティなタイプだと良いですし、色々と動き回ることになりますのでフットワークが軽いことも大切です。色々と軌道修正を繰り返すことになりますので、過去の判断に固執せず色々な声やヒントに耳を傾けられる柔軟さも必要です。

事業の成功には、良い市場と良い経営者があるものです。良い経営者に任せられることができれば、紆余曲折があっても良い市場を見つけてくることもできます。逆にいくら良い市場に参入できたとしても、経営者が良くなければ成功には至りませんので、リーダー選びは新規事業に取り組む前に熟慮しておくポイントです。